『ハリー・ポッターと賢者の石』J.K.ローリング — 11歳の誕生日に届いた、魔法の世界への招待

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本を読む楽しさを、世界中の子どもたちに――そして大人たちにも――思い出させた物語があります。J.K.ローリングの『ハリー・ポッターと賢者の石』(原題 Harry Potter and the Philosopher's Stone)。1997年にイギリスで出版された「ハリー・ポッター」シリーズの第1作です。いまでは数多くの言語に翻訳され、世界中で読まれています。

映画で知っている方も多いでしょう。でも原作には、映画に収まりきらない細かな楽しみが詰まっています。今回は、はじめて読む方や映画しか見たことのない方に向けて、物語の入り口と読みどころを紹介します。結末や後半の展開には触れません。

どんな本か――作者と時代

作者のJ.K.ローリング(本名ジョアン・ローリング)は、1965年7月31日、イギリス西部グロスターシャーのイェイトで生まれました。物語の着想が浮かんだのは1990年。マンチェスターからロンドンへ向かう列車が遅れているあいだに、ハリー、ロン、ハーマイオニーという登場人物たちが、はっきりと頭に浮かんできたといいます。その後スコットランドのエディンバラに移り住み、カフェで原稿を書き進めました。

書き上がった原稿は、すぐには本になりませんでした。エージェントが1年かけて出版社に売り込みましたが、多くの出版社は「長すぎる」と考えたのです。最終的にブルームズベリー社が引き受け、1997年6月26日にイギリスで出版されました。同じ年にはネスレ・スマーティーズ賞(9〜11歳部門)の金賞を受けるなど、評判はすぐに広がります。アメリカでは翌1998年9月、スコラスティック社から『Harry Potter and the Sorcerer's Stone』という題で出版されました。日本語版の『賢者の石』という題名は、イギリス版の原題に沿ったものです。

物語の入り口――意地悪な親戚の家と、ふしぎな手紙

主人公のハリー・ポッターは、両親を亡くした男の子です。イギリスの架空の町リトル・ウィンジングで、おじのバーノン、おばのペチュニア、いとこのダドリーのダーズリー一家と暮らしています。ダーズリー家はハリーにつらく当たり、甘やかされて育ったダドリーはハリーをいじめてばかり。居場所のない毎日です。

そんなある日、ハリーあての手紙が届きはじめます。ところがダーズリー家は、なぜか必死になって、その手紙をハリーに読ませまいとするのです。そしてハリーの11歳の誕生日、ハグリッドという大男が現れ、ハリーが魔法使いであること、そして魔法の学校ホグワーツに入学できることを告げます。

ハグリッドに連れられて出かけたダイアゴン横丁で、ハリーは自分が魔法使いのあいだでは有名人だと知って驚きます。杖を買い、ふくろうのヘドウィグを手に入れ、ひと月後にはホグワーツ特急に乗りこむ。その車内で、同じ1年生のロン・ウィーズリーと友だちになります。

学校で何が待っているのか、そして題名の「賢者の石」とは何なのか――それはぜひ本で確かめてください。

読みどころ――何も知らないハリーと同じ目線で

一つ目の読みどころは、ハリーが魔法の世界について何も知らないところから物語が始まることです。読者はハリーと同じ目線で、横丁のお店、杖選び、学校へ向かう特急列車と、ひとつずつ驚きながら新しい世界に足を踏み入れていきます。ファンタジーを読み慣れていない人でも迷子にならないのは、この作りのおかげです。

二つ目は、「学校の物語」としての面白さです。授業、先生たち、気の合う友だちと、どうにも気の合わない同級生。舞台は魔法学校でも、描かれる気持ちは私たちの学校生活とよく似ています。そこに少しずつ謎が重なり、ページをめくる手が止まらなくなっていきます。

そして、居場所のなかった少年が、はじめて自分を受け入れてくれる場所を見つけていく物語でもあります。大人になって読み返すと、ここがいっそう胸にしみます。

こんな人におすすめ

  • 映画は見たけれど、原作はまだ読んでいないという人
  • 長いシリーズに手を出す勇気が出ず、まずは1冊だけ試してみたい人
  • 親子や友だちと、同じ本の話で盛り上がりたい人

日本語版は、静山社から松岡佑子さんの訳で1999年12月に刊行されました。現在は新書判の「静山社ペガサス文庫〈新装版〉」でも読むことができ、『賢者の石』は「1-1」「1-2」の2冊に分かれています(2024年4月刊)。

ダーズリー家に届く手紙の騒動で思わず笑ってしまったら、もう魔法の世界の入り口に立っています。

English version of this review: Harry Potter and the Philosopher's Stone

参考

  • Wikipedia「Harry Potter and the Philosopher's Stone」(英国初版の刊行日・出版社、米国版の題名と刊行、受賞、序盤のあらすじ) https://en.wikipedia.org/wiki/Harry_Potter_and_the_Philosopher%27s_Stone
  • Wikipedia「J. K. Rowling」(本名・生年月日・出生地、着想の経緯、エディンバラでの執筆) https://en.wikipedia.org/wiki/J._K._Rowling
  • Wikipedia「ハリー・ポッターと賢者の石」(日本語版の訳者・出版社・発行日) https://ja.wikipedia.org/wiki/ハリー・ポッターと賢者の石
  • 静山社『ハリー・ポッターと賢者の石 1-1』静山社ペガサス文庫〈新装版〉松岡佑子訳 https://www.sayzansha.com/book/b643844.html
  • 静山社『ハリー・ポッターと賢者の石 1-2』静山社ペガサス文庫〈新装版〉松岡佑子訳 https://www.sayzansha.com/book/b643846.html